ついに来てしまったか、そんな感じでした。
悪い噂はかなり前から流れていたタイ国際航空(TG)ですので、ニュース自体に驚きはあまりありません。しかし政府系航空会社の破綻という事の重大さははかり知れません。
こちらも経営不安がささやかれるアシアナ航空のことも含め、今後スタアラ特典航空券にも大きな影響が出るかもしれない大問題です。。。
経営状況は悪かったTG
タイ国際航空(TG)はタイ政府が株式の51%を持っている「ほぼ」国営航空会社といえます。
この2年ほど大きな赤字が続いていたために、大規模なリストラなどの対応を迫られていました。しかし、日本でいうところの親方日の丸的なところでしょうか、なかなかこれといった対応が出来ずにズルズル来ていた感があります。そしてコロナ前の2019年12月期で3年連続の赤字となっていました。
コロナの影響が加味される2020年12月期はとんでもないことになるのは明らかな状態だったといえます。
経営破綻が続く航空業界
今回のTGに限らず、コロナの影響の前でも破綻する航空会社はそれなりにありました。2010年のJAL経営破綻は記憶に新しいですね。
フルサービスキャリアに絞っても、
- 2017年 アリタリア航空(イタリア)
アライアンスはスカイチーム。現在国有化に向けた動きが出てきています。 - 2019年 ジェットエアウェイズ(インド)
「破産」処理となり、全便運航停止となりました。
この度のコロナウイルスの影響でこのところ破綻する航空会社のニュースは多かったんです。
- ヴァージン・オーストラリア(オーストラリア)
- アビアンカ(コロンビア)アライアンスはスターアライアンス
これら2社は運航は継続されます。
これらの比較的大手の航空会社以外を含めたらもっとたくさんあるでしょう。それぞれの破綻処理の方法はいろいろですが日本でいうところの「破産」「特別清算」なのか、「民事再生法」「会社更生法」の適用を受けるパターンなのかによって違いがあります。
前者はジェットエアウェイズ、後者はヴァージンやアビアンカです。影響の大きな大手は運航継続の上での経営再建となるパターンが多いです。
ちなみに日本航空が経営破綻した2010年に申請したのは「会社更生法」でした。会社更生法は、破綻した会社の経営者が再建に手を出せません。
「民事再生法」適用であれば、旧経営陣がそのまま再建に携わることができますね。
2010年JALに類似
親方日の丸で対応が遅れたことが結果的に命取りとなったJALの破綻と今回のTGの破綻処理は少し似ているところがあります。
JALの破綻処理
JALの時も公的支援を入れる条件として、大規模なリストラなどが求められていました。不採算事業の切り捨てなども含めた思い切った再建計画を策定して公的支援を入れて生き残る道はあったのですが、それができなかったために融資が得られずに経営破綻となりました。
破綻後は全社員の3分の1のリストラ、不採算路線からの撤退や海外ホテル事業などの赤字事業からの撤退が行われたのは記憶に新しいです。
準官営企業ならではの体質や利害関係が邪魔をして、適切な対応が取れなかったわけですね。
TGの破綻処理に向けた動き
今回のTGの破綻に際して、政府からは再建策の策定を再三要求されていながら具体的な案を出すことができなかったようです。この点でJAL破綻ととても似ているように感じます。
国営企業だからつぶれる恐れがないだろう、公的資金投入で生き残れるだろう、という考えがあったのは否めません。天下りの経営陣、リストラに反対の労働組合、TGに絡んだ様々な利権を持つ人たちが再建策の策定を邪魔していたのもJALの時のようです。
コロナ後の運航再開
TGは6月30日までの国際線全便運休が決定しています。7月以降の運航再開についても未定という状況です。
7月1日以降の運航予定路線
バンコク=羽田・成田・関西・中部
10月24日まで運休の路線
バンコク=札幌・仙台・福岡の全便、中部と関西の一部便
運航される予定があるのは羽田・成田・関西・中部線の7月1日以降となりますが、まだどうなるのかわかりませんね。
マレーシア航空のような感じで、日本路線で残るのは東京・大阪だけになるかもしれませんね。。。
スターアライアンス各社への影響
不採算路線からの撤退
今回の破綻処理開始にともない、おそらく不採算路線からの撤退が進むと予測されます。特にTGの場合はLCCと競合する路線が多いのが特徴で、採算を圧迫する原因の一つになっています。
例えば昨年夏ダイヤのバンコク/スワンナプーム=福岡線にはTGがデイリーと週3便の計10便飛んでいました。このほかにドンムアン線でタイエアアジアXとタイライオンエアが飛んでおり、タイライオンエアがデイリー、エアアジアが週3~4便でした。
ライオンエアは737-800、TGとXJはほとんどががA330-300で運航されており、明らかに座席供給過多と思われます。
客単価もLCC競合路線では思ったように上がらないと思われ、苦戦必至です。
おそらくこれらの地方都市への便は撤退するんじゃないでしょうか。日本へのTGのフライトはANAのコードシェアとなっています。これらコードシェア便でANAがカバーしていた都市も直行便がなくなることになります。
ANAとのコネクティングフライトの減少
スタアラ系でANAとのコードシェアが多いTGです。ANAはバンコクから先の乗継便でTGとのコードシェアをもちろん多く設定しています。
TG運航の便数や就航都市の減少はANAや他のスターアライアンス加盟会社へも影響します。
子会社のタイスマイルがスターアライアンスコネクティングパートナーになってしばらくたちます。コロナ騒動で実際にその利益を享受した人はほとんどいないと思いますが…。タイスマイルの便にTG2000番台の便名を付けた運航はかなり見られますが、運航再開後にこのあたりをどうするのかも注目ではあります。
気になる特典航空券の扱い
ANAでマイルをためている方や他のスタアラ系マイルをお持ちの方が気になるのが、スターアライアンス特典での特典航空券の取り扱いです。
スタアラ系の特典航空券は、加盟各社の便を混ぜて乗り継ぎの行程を発券できるので便利です。私の場合はユナイテッドのマイルでTGとSQにNHを絡めたルートを発券することがあります。例えば、
SEL(NHorOZ)TYO(NH)CAN ビジネス
HKG(SQ)SIN(SQ) DPS ビジネス
DPS(TG) BKK(TGorOZ) SEL エコノミー
のような感じですね。TYO・SIN・BKKは24時間以内の乗り継ぎになりますが、この行程はUA発券ならHKG=SIN=DPSはエクスカーショニストパークでSQのHKG=DPSのビジネスが無料でついてきます。
これができるのはスタアラならではです。アジア内の周遊が主な私にとってTGはバンコクが絡められる貴重な航空会社です。
スターアライアンスから脱退するということは今のところ考えにくいと思いますが、今後の動向で不採算路線の撤退や減便はもちろん、搭乗率向上のためにA380や747などの大型機の削減などはある程度行われることが予想できます。
それによって特典航空券への配分が減る可能性は否定できません。スタアラ系からTGが使えなくなることはバンコク滞在を設定するのがとても難しくなるので一大事です。ひとまずはスタアラ特典のTGが今まで通り使えることと、できれば提供座席数も減らさないでほしいところです。
さいごに
国営企業的であったタイ国際航空がとうとう外部からの経営者を招いて再生へ動き出すことになります。将来的な民営化も視野にあるようです。
機材の老朽化などが目立つ最近ではありましたが、ホスピタリティやサービスクオリティには定評のあるTGです。
まずは7月以降の運航再開がどうなるかを待ちたいと思います。